28、余韻

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(……ものすごいことになってそう……)  そう思いながらメッセージを確認し、予想通り壮太からのメッセージが十連続くらいで連なっているのを見て沙和は顔を引きつらせた。のっそりと起き上がって確認するが、椎名はまだ眠っている。  少しだけ考えてから、沙和はベッドからそのままベランダへと出た。初夏の生暖かい風が頬をなでる。まとわりつくような暖かい日の光に沙和は目を細めてから、壮太に電話をかけた。  コール音二回で「もしもし!」と壮太の勢いづいた声が耳に飛び込んでくる。 「……朝から元気だね」  こっちの声はかすれ気味だ。寝起きだからに他ならないのだが、壮太は邪推して「ちょっと! 声変じゃない!? やっぱり昨日ヤったんでしょ!」と朝から興奮気味である。 「……してないよ。今起きたばっかりだから、声かすれてるだけ」 「マジで? 椎名は!?」 「まだ寝てる」 「ほら! 昨日運動したからってオチでしょ」 「もー違うってば。妄想しすぎ」 「いや、これが健全な発想だから。椎名は沙和を狙ってるんだよ? 隙あらば手を出すでしょ」 「……自制心があるんだよ、椎名君は」  多分、というか絶対。  昨晩のことを思い出すと、恥ずかしさと何かもどかしい気持ちで胸が苦しい。確かにセックスはしていないのに、とてつもないことをしでかした気持ち。   「とにかく、壮太が思うようなことはしてないから……」 「……俺が思ってることの、何がわかるの。一つずつ言ってみたっていいんだよ?」 「いいよっ、結構です!」 「……今から俺、そっち行っていい? 自分の目で確かめないと気が済まない」 「それはやだ」  昨晩のメッセージのようなやりとりを、目の前でされたらたまらない。沙和は思い切り顔をしかめてしまった。 「なんで!」 「だって壮太が大騒ぎしそうだから」 「しない。約束する!」 「いや絶対無理でしょ!  ていうか、少しくらい一人にさせてよ!」  思わず大声で言い切った後、また大きく息を吸い込んで「ちょっと自分でも頭の中、整理したいの。いろんな事があったから……」とトーンを落として告げた。  相原のことも、椎名のことも、そして壮太のことも。  嵐のような出来事に翻弄されてばかりで、沙和の足はいまだ地に着いていない心地がする。全ての物事に位置づけをしたい。それは沙和の今一番の願いだった。
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