28、余韻

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 なんで沙和の考えていることがわかったのだろう。  図星をつかれて少し慌てつつ「そ、そっか」と沙和は相槌をうった。 「望月さんもありますよね?」 「うん」 「……怒ってます?」  おそるおそる沙和の反応を伺う椎名が震える子鹿のようで、沙和はぐっと詰まってしまう。 (こういう緩急やめて欲しい……!)  ここで沙和が『もうめちゃくちゃ怒ってる! 信じられない!』とか言ったとしたら、絶対にこちらの方が罪悪感を感じるに決まっているのだ。 (しかも普通に気持ちよかったし……!)  つまり、怒れるような立場にないということ。 「……別に怒ってないよ」  ふいっとそっぽを向く沙和に、椎名は「良かった」と嬉しそうな反応を示した。 「告白の返事はまだしないでくださいね。もう少し俺頑張りますから」  そう言って、椎名は付け合わせのスクランブルエッグの最後の一口を口に運ぶ。食事を済ませてようやく脳が活発に動き始めたのか、目には確かな光が宿り始め、もう椎名は普段の彼の姿に近づきつつあった。  その証拠に、何かを思いついたというように目をきらめかせると「それで、どうでしたか? 俺のこと、ちゃんと男だって認識できました?」とほんの少しだけ沙和との距離をつめてきた。  ソファに隣り合って座っているから、近づこうと思えばすぐにそれが実行できる。実際には椎名はそう大胆に動いたわけではないが、沙和は大げさなくらいに後ずさって「それはもう!」とうなずいた。    十二分に感じさせてもらいました。  もうお腹いっぱいです。  沙和が耳を赤くしているのを見て、椎名は嬉しそうに笑った。 「望月さん、顔に出すぎです」  かわいいなぁと椎名が楽しそうに呟く。完全にからかわれている。 「もう一回くらいしてもいいですか?」 「ダメに決まってるでしょ!」  ずいっと顔を近づけてくる椎名から逃げるように身を翻して、沙和はソファから立ち上がった。このまま片付けをしようと皿を重ねて始めると「あ、皿洗いは俺しますよ」と椎名もマグカップを手繰りよせる。 「いやいいよ。私するから」  そう沙和が遠慮しても、椎名は「これくらいはやりますから」と先にキッチンに行って、流しを陣取ってしまった。 「ありがとう……じゃあ、お願いします」 「はい」
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