28、余韻

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 椎名も一人暮らしをしているから、基本的な家事はできるようだ。手際よく洗っていく様を眺めていると「心配しなくても、これが終わったらすぐ帰ります」と椎名が言った。 「昨日から望月さんもずっと気を張り詰めてましたもんね。ゆっくりしたらいいです」  その言葉にどこか不自然でわざとらしいものを感じて、沙和は椎名の横顔を見つめた。 「……電話、聞いてたの?」  ベランダで壮太と話していた時、確かにヒートアップして大きな声が出ていたかもしれない。椎名はここで沙和と目を合わせると「……ちょっとだけですけどね。ふっと聞こえてきたんです」とバツが悪そうに申告した。 「望月さんが一人になりたいみたいなこと言ってるのが聞こえて、あーそっか、そうだよなって思って。でも俺もまだ寝ぼけてたから、そのまま二度寝しました」 「そっか……」  なんだか申し訳ない気持ちになりつつも、それが正直なところだったので、沙和は何も言わずに洗い終わった皿を拭き続けた。椎名の方は特に気にした様子もない。 (椎名君て……もしかしたら思ってる以上に大人なのかもしれない)  幼い見た目の印象のまま、彼の人となりを推し量っていたのかもしれない。  ふとよぎった考えだったけれど、沙和はそれに確信を持った。
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