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「ごちそうさまー」
優しい感触と心底嬉しそうな笑顔にほだされて、なんだかんだ沙和は壮太を突き放せない。
セックスすることは、幼馴染としての親愛の情を超えていると思うけれど、どうしようもなかった。
鼻歌交じりにバスルームへと消えた壮太を見送ってから、沙和は再び目を閉じた。
なんで会いにくるんだろう。
なんでセックスをするんだろう。
沙和はいつも不思議に思う。
(やっぱり最初の時、なしくずし的にしちゃったのがまずかったなぁ……)
それは二年ほど前のある日。いつものように気まぐれに壮太がやってきて、なんとなくセックスをした。お互い「好き」という言葉は発しなかったため、付き合うという話にもならなかった。
沙和は壮太のことを憎からず思っていたけれど、恋愛対象として唯一の存在かと問われるとよくわからなかった。そして、それは壮太も同じで、今のような関係になっていったのだ。
ちなみに既にその時、壮太にはマリちゃんがいた。
それを思うと、壮太は割とゲスな方の部類に入るかもしれない。
(まあそれで拒否しない私も私か)
ふーと息を吐いて、もったりと体を起こす。壮太の次にシャワーを浴びるから、とりあえずさっきまで着ていたものを身につける。(肌着だけはやめておいたけれど)
テレビをつけると、既に昼のバラエティ番組が始まっていた。
それをぼんやり眺めていると、壮太が戻ってきた。腰にバスタオルを巻いただけの、無駄に扇情的な格好だ。
沙和の慌てる顔が見たいようだが、2年間同じことをされても驚くわけがない。沙和は呆れた視線を投げて「服着てから戻ってきてよ」とお決まりの文句を言った。
「忘れたからさー」
明らかに確信犯だろという沙和の視線を総無視して、壮太はクローゼットから適当に洋服を物色し始める。やれやれと思いながら、沙和は自分もバスルームへと向かった。手早くシャワーを浴びて戻ると、白いニットにジーンズを合わせた壮太がソファに背を預けてテレビを眺めている。
「ほんっとに壮太って白着ると、うさんくささが増すね」
「失礼なー」
「いや、本当のことでしょ」
それより時間大丈夫なの? と聞くと、壮太はテレビで時刻を確認して「んー……まあ、いっかな」と伸びをした。
「今日は俺がドタキャンしようかなー」
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