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沙和が好きなのはいわゆる戦略シミュレーションというジャンルのゲームである。ゲーム開始時に勢力を選び、その勢力を様々な方法で発展させ、他国の領土を侵略し、そして天下統一を目指すというもの。三國志や戦国時代などの歴史系や西洋ファンタジー世界のもの、果ては近代の軍事国家ものまで、幅広い世界観の色々なゲームが出ている。
「今は軍隊ものやってて、陸海空軍の総督やってる」
「それは渋いな」
「自分でもそう思うよ」
沙和の友達の中にもゲームが好きな子はいるが、多くはスマホで手軽にできるものや王道のRPGを好んでいる。戦争系のゲームが好きと言っても、あまり共感を得られたことはない。だからもう最近では自分から話題にすることもなかった。
今プレイしているものは一応架空の世界を舞台にはしているが、世界観がしっかりしている。各勢力の文化レベル、産業レベルに合わせて、武器の設備が大きく変わるから、内政や貿易を同時進行で発展させることが重要だ。そんなところが面白いと力説していると、相原が「久しぶりに見たいな」と言った。
「え?」
「うん?」
一瞬の沈黙の後、お互い視線を交わす。無意識に立ち止まっていた沙和の腕を軽く引いて、相原は「何?」と聞いてきた。少々つんのめりつつ歩き出し、沙和は「ゲームが見たいの?」と確認をとる。
高校時代も一度だけそんなことがあった。
当時の沙和は『三國志』を題材にしたゲームをプレイしていて、その話をしたら相原が興味を持ったのだ。彼は三國志の知識はあったけれど、ゲームは未経験だった。軽い冗談のつもりで「じゃあうちに見にくるー?」と言ったら、相原が本気にした。嘘でしょと思ったのだが、テスト前の部活休みの日に本当に相原は沙和の家までやって来た。
だからと言って浮いた展開になることは全くなかった。
二人きりの空間だったけれど、ひたすらゲームをしていた。
内政と戦争を繰り返す沙和とゲーム画面を見ながら、相原は楽しそうだった。戦術を考えるのは好きなようで、陣形なども少し見てすぐに覚えた相原は、最後には的確な助言をしてくれたりもしたのだ。
沙和もだが、相原も、その時のことを思い出しているのかもしれない。
「それって、うちに来たいってこと?」
「そう。なんか話聞いてたら懐かしくなった」
「別にわたしはいいけど……」
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