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16、翌朝の二人
部屋の中が随分と明るい。今は何時だろう。
沙和はうっすらと目を開けて、室内を満たす光に目を細めた。暖かな春の日差しがカーテン越しに部屋を照らしている。少しずつ焦点が合ってくるとともに、すぐ目の前にある相原の寝顔がはっきりと視界に飛び込んできた。
「……っ!」
邪気のない寝顔なのに、瞬時に昨晩の記憶が呼び起こされて沙和の体はこわばった。
沙和は知っている。
この目が開いたら、沙和を捕らえて離さない。
その手が動けば、沙和をがんじがらめに縛ろうとする。
昨晩散々と弄ばれ泣かされた身としては、警戒心しか感じられない。
(夢じゃない……)
静かに身を起こして、沙和は裸の自分の体を見下ろす。相原は最初こそ沙和を噛んだりもしたが、その後はずっと丁寧な愛撫を施した。キスマークもつけられてはいないから、沙和の体はまっさらなままだ。
ただ、自分の内側。膣の中は違う。
今でもどろりとした液体が奥には残っている。それが沙和自身の分泌液に他ならないことが、みじめな気持ちにさせる。
相原は何度も沙和の中に自身の熱を入れて突き上げたが、約束通り、決して中に注ぐことはしなかった。
ゴムをつけたり、沙和のお腹に吐き出したり、そのへんはとても気をつけているようだった。そんなところで誠実になるよりも一回でやめてほしいと心底思ったけれど、昨晩の沙和に言えるわけもなかった。
「……望月は睡眠時間が短いな」
「!! あっ……いはら」
予想もしていなかった背後からの声にびっくりして振り向くと、薄目をあけた相原が沙和を眺めていた。寝起き特有のぼんやりとした表情に、昨日までならほのかなときめきを感じていたのに、今の沙和はそうではない。
「昨日あれだけ動いたのに、もう起きるのか?」
「……うん、シャワー浴びたいから」
動揺を押し隠して立ち上がろうとして、足を踏み込んだ瞬間沙和はまたベッドに座り込んだ。足に力が入らなかった。
「あれ……なんで……?」
「昨日あれだけ股関節に無茶をかけたからじゃないか?」
涼しい声で言って、相原も起き上がった。彼の方は何も問題ないようで、すくっとベッドから立ち上がる。ボクサーパンツ一枚の姿が目に毒すぎて、沙和は頬を赤らめて目をそらした。そして自分はタオルケットを厳重に体に巻きつける。
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