16、翌朝の二人

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 ◆  普段よりも時間をかけてシャワーを浴びると、体の方もなんとか動かせるようになってきた。色々とべたついたものが綺麗に流され、心も少しだけさっぱりとする。  そして部屋に戻ると、沙和は相原が口を開くより先に「朝ごはん、食べに行かない?」と声をかけた。  駅前のファーストフード店のモーニングが、今ならば間に合う時間だった。朝ごはんを作る気力はないし、何よりも相原とこの部屋に二人きりでいるのを避けたい。  そんな沙和の意図に気づいているのかいないのか、相原は特に気にするそぶりもなく「いいね、そうしよう」と快諾した。今回は私服も持ってきていたようで、すでに相原はボーダーのロングTシャツに細身のジーンズ姿だ。  沙和も紺色のカットソーとベージュのワイドパンツを身につけて、乾かしたばかりの髪をゆるく一つにまとめた。外はだいぶ日差しがきつそうなので、日焼け止めを塗って準備は完了だ。    思った以上に体の倦怠感は残っていたけれど、相原にそれを気づかれたくなくて必死に足を動かして目的の店に着く。土曜日の朝のファーストフード店は、中途半端な時間の割に結構人がいた。駅の反対側には大学があるから、そこの学生が多いようだ。 (みんな明るい顔してるなぁ……)  若さゆえの無邪気さが眩しい。  それを横目に、沙和と相原は二階席の窓際に席をとることにした。カウンター席だったので、いくらでも視線を逃す場所があるのが救いだった。  相原はリラックスした雰囲気で、駅前を行き交う人をのんびりと鑑賞しながらサンドイッチを頬張っている。時折「今日は天気がいいな」とか「ここのサンドイッチも久々だから美味しい」とか、たわいもない世間話を挟んでくるのが、妙な気分だった。 (まるで、何もなかったみたいな感じ……)  相原にとって昨日のことは、一体どういう位置づけなのだろう?  まるで推し量れないままにサンドイッチを食べ終わってしまい、いよいよ沙和は覚悟を決めて切り出すことにした。 「あのさ……相原に聞いて欲しいんだけど」 「何?」  相原は穏やかな表情のまま沙和を見やった。春の日差しを浴びて柔らかい雰囲気すら感じる。背後の賑わいにも勇気をもらって「正直に言うよ?」と念を押してから、沙和は一度まわりを確認した。
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