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壮太が約束をドタキャンされた『マリちゃん』とは、毎週金曜日に会っている彼のセフレだ。もう3年もそんな関係が続いているのだから、いっそ付き合っちゃえばいいと思うのだが、それを言うと壮太は露骨に嫌そうな顔をする。
軽い関係がお互い良いんだそうだ。
そうは言っても、『マリちゃん』は壮太よりも六つ年上。つまり今年三十三歳だ。その年齢になると、色々と将来のことを考え始めたりするものなのではないだろうかと、ひそかに沙和は心配している。
「最近沙和とはしてなかったし、久しぶりにいいじゃん」
チュッと音をたてて壮太は沙和の首筋に吸い付いた。
「やだってば! そんな気分じゃないし……」
「大丈夫だって、俺盛り上げるから」
くすぐるようなキスを繰り返されると、確かに簡単にうなずいてしまいそうになる。けれど渾身の力をこめて、沙和は再びダメと繰り返した。
「今日ムダ毛処理してないからっ……」
耳たぶを甘噛みし始めていた壮太は動きを止めて、沙和と目を合わせてきた。そして顔を赤くしている沙和に対して「そんなの俺気にしないから」と満面の笑みを浮かべた。
「じゃあオッケーってことで」
嬉々として沙和のスウェットをまくりあげようとする壮太を「だからやだってばーー!」と沙和は渾身の力で突き飛ばした。
「うぉっ」
虚を突かれた壮太が、勢いよくソファから落ちる。どすんと尻もちをついて、壮太は恨めしげに沙和を睨んだ。
「なんでそんなに嫌がるかなぁ? ムダ毛なんて見ないって」
「ダメったらダメ! また今度!」
「今度っていつ?」
「え? うーん……」
「明日?」
「……う、じゃあ、明日」
勢いに飲まれてうなずく沙和に、壮太は「よし、じゃあ明日ね! あ、明日って朝のことだからね!」とにやついた。
「朝!? やだよ! 夜でしょ!」
「夜は帰るつもりだったしー」
「嘘つけ! いっつも居座るくせに!」
二人でやいのやいの言い合いをして、結局沙和が根負けした。壮太は「よしよし、じゃあ朝になる前にちゃんと処理しといてね。でも何度も言うけど、俺は気にしないから」と笑顔で言い放つと、いそいそとベランダの際に配置されたベッドへと移動した。毛布をかぶったところを見ると、もう寝るらしい。
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