1715人が本棚に入れています
本棚に追加
/221ページ
「あのですね、はっきり言います」
「はい」
「俺が君をうさぎとイメージしたのは目が赤かったから」
「………え」
「注文を取りに行った時に見た君の目が赤かったから、それを見てうさぎみたいだとイメージした。ただそれだけのこと」
「……」
「うさぎ年生まれだとか、名前が兎だろうが、そういうのは全く関係なく、ただそれだけの理由であのカップを出したんです」
「……」
「なので君が考えるような運命の人とかってロマンチックなものは一切ありません。以上」
「……」
「解ったらそれを飲んで帰りなさいね」
「……」
それだけ言うと店長さんはカウンターから出てテーブル席の上に椅子を乗せて行った。
(……運命の人じゃない)
そうハッキリ言われた。言われたのに──……
(なんで私、落ち込んでいないんだろう)
彼が言ったように私にうさぎをイメージしたカップを出した理由は大したことではなかった。
私のことを解って出されたものではなかったと知ったのに。
(それでも、私──)
「好きです!」
静かな店内に声が響き渡った。モップを手にしていた店長さんが驚いた顔をして私の方を見た。
「それでも私、あなたのことが好きです!」
「……」
「傍にいたいんです!」
「……」
「だから私を此処で働かせてください!」
「……」
その場で深く頭を下げた。
最初のコメントを投稿しよう!