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「好きになってもいい権利って何? そんなこと、初めて言われた」
「……」
「謙虚というか堅いというか……積極的なんだか消極的なんだか」
「……」
「自慢じゃないけど俺、結構モテるんだよね」
笑いが治まった店長さんが零した言葉はバッチリ耳に届いた。
(そりゃそうでしょうね)
私が好きになるくらいだから相当モテるだろう。
「告白も結構されるんだよね」
「……はい」
(自慢? 自慢しているの?)
──というか
(なんだか……私と似た人種?)
店長さんの言葉が何故か自分と重なることが多くて今更ながら嫌な感じがして来た。
「告白して来た子が可愛いなと思ったら付き合って来た。付き合っていればそのうち好きになるだろうと思っていたから」
「……」
「でも──どの子も長続きしないんだよね」
「…!」
(やっぱり!)
この人は私と同じで来る者は拒まず、去る者は追わずな恋愛受け身体質の人だった。
自分と似通った恋愛観の持ち主だろう人を好きになってしまった──これが意味するものは何だろう。
「あの……」
「まぁ、いいか」
「え」
「君、可愛いしね」
「!」
店長さんは私の元まで来て手を取った。
「じゃあ付き合おうか」
「は、はいっ!」
「でも俺と付き合うっていうのはただ清いだけの付き合いじゃないってこと、覚悟している?」
「? はい。付き合うってそういうことですよね」
「んー……やけに物分かりがいいのもちょっと困りものだけど」
「……」
付き合ってくれるという言葉を訊いて嬉しいはずなのになんだか彼の言葉の端々に違和感を覚えた。
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