1715人が本棚に入れています
本棚に追加
/221ページ
「なるべく年相応な交際を心掛けるけどね。でも此処で働くとかは駄目だよ」
「どうして」
「どうしてって、やっぱり高校生は学業優先でしょう。俺、そういうことには厳しいよ」
「……へ?」
「ちゃんと勉強と恋愛を両立して──」
「あの!」
「何」
(もしかして……)
先刻からの違和感の正体がまさかこれだったのか?! と頭を過った。
「私、高校生じゃないです」
「え、高校行っていないの?」
「行ってません。12年ほど前に卒業しました」
「───え」
(あぁ……この顔、やっぱり)
「もしかして私、高校生に見えました?」
「え……だって君、うさぎ年生まれでしょう?」
「はい」
「だから今年17か18……」
「もう一回りしています」
「……え」
「想像している年よりももう一回り上のうさぎ年です」
「え………え、えぇぇぇぇぇっ?!」
そう、私はもうじき30になるアラサーだ。見た目が幼いからよく実年齢よりもうんと歳下に見られるけれど……
(高校生に見えるのって、本当複雑)
この童顔で寄って来た男は大抵実年齢を知って驚いた。そして見た目と中身のギャップに騙されたと去って行くのだ。
「あの、驚き過ぎです」
先刻からあり得ないという表情をしっ放しの店長さんにボソッと呟いた。
「だって君……それ犯罪級の童顔だよ? てっきり未成年だと思ったから俺──」
「……」
(ひょっとして高校生だと思ったから諭すようなあれこれを言ったのかな)
今までのやり取りを反芻してそれに気が付いた。そしてそう思ったら何故か彼に対しての好感度が少しアップした。
(モテるけれど一応見境無しって訳じゃないんだ)
常識がある人なのだと思ったらまた胸がトクンと高鳴った。
最初のコメントを投稿しよう!