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(あぁ……家の場所も訊いておけばよかった)
今更ながらそんなことを考えるけれど、今まで付き合って来た彼との間で私から連絡先や家の場所を知りたいと思ったことがなかったから全く気が付かなかった。
(……もしかしてわざと、かな)
店の壁にもたれながら色々考えていると次第に悪いことしか考えられなくなる。
(やっぱり歳上と付き合うのが嫌になってわざと電話にもメールにも出ないのかな)
悲しいことにそう考えると連絡がつかない理由がしっくり来てしまって泣きそうになってしまう。
(いやいや……嘆いている場合じゃない!)
自分勝手にあれこれ想像して自滅するのは愚かなことだと思い直した。
例え付き合うのが嫌になったとしても、それは彼本人から直接訊かない限り考えてはダメなのだと気持ちを奮い起こした。
(じゃあこれからどうしようかな)
急にポッカリ空いた時間。特に何も考えていなかったからこれからどうしようかと引き続き壁にもたれて考えていた。
時間にしてほんの数分だったと思う。ぼんやりとしていた私の頭にいきなり違和感を覚え、意識は一気に浮上した。
頭に置かれた温もりに視線を向けてみれば其処には彼が立っていた。
その瞬間、目頭が熱くなった。胸も締め付けられるような痛みを孕んだ。
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