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芳香と明登くん夫婦と定期的に行われている食事会。私たちが結婚してからもそういう付き合いは続いていた。
「はぁー愉しかったね、悠真くん」
「うん、愉しかった」
「お料理も全部美味しくて満足満足」
「うん、美味しかった」
その日も賑やかにお喋りをして美味しい料理を沢山食べて、愉しい時間を満喫して芳香たちと別れた。
ふたりきになった私たちはお互い手を繋ぎながら我が家に向かって暗い夜道を歩いていた。ほんの少しだけお酒に酔った私は更に上機嫌だった。
「もう、なぁに? 先刻からオウム返しな返事ばかりしちゃって」
「あれ、怒ったの?」
「怒ってはいないけどー。ちゃんと悠真くんの言葉が訊きたい」
「ははっ、美兎ちゃんは酔っていても可愛いね」
「……」
不意打ちに『可愛い』発言をされてほんのり熱かった顔が更に温度が上がった気がした。
「美兎ちゃん?」
「それ、30になったおばさんに言う台詞じゃないよ」
照れ隠しにそんなことを言ってみれば隣でクスッと笑う声が聞こえた。
「美兎ちゃんが30歳っていうの、本当に詐欺だよね」
「詐欺?!」
「だってどこからどう見ても見かけは女子高生みたいでしょ」
「それは私のせいじゃないもん」
褒められているのか貶されているのか解らない状態でプゥと頬を膨らませるしかなかった。
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