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自宅に戻ったのは22時過ぎだった。
結婚した私たちはひとり暮らししていたお互いの部屋を解約し、ふたり住まい出来るマンションに引っ越していた。
築年数は経っていたけれど私たちの身の丈に合った家賃相場の割に広くて中々綺麗な部屋を見つけることが出来た。
しかしこの部屋に越して来るまでは結構大変だった。その原因は私の父だ。
父は結婚した私たちに新築一戸建てをプレゼントすると言い出したのだ。
勿論私も彼もそんな父の申し出を断った。私たちはふたりの力で生活して行きたいと強く思ったし、そこに実家の金銭的な援助は迷惑だとさえ思っていた。
そんな私たちに父は最初こそ酷く立腹していたけれど、母や由卯の後方援護のおかげがあって私たちの気持ちはなんとか汲み取ってもらえた。
(本当、親馬鹿というかなんというか)
これで孫でも出来たらどうなってしまうのか──なんて考えたところで「美兎ちゃん」と声をかけられた。
「っ!」
「ん? どうしたの」
「あ……ううん。ちょっと考えごとしちゃってて……何?」
「お風呂の用意が出来たから入ろうと声をかけたんだけど」
「あぁ、うん。入ろうか」
「……」
結婚する前からも私たちはお風呂には一緒に入っていた。その習慣は結婚した今でも続いていた。
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