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父は彼が営んでいる小さなカフェでは結婚後の生活に支障をきたすだろうと言い出し、カフェを大きなお店に建て替えると息巻いた。
その提案に彼も私も反対した。確かに今のカフェだけの経営では夫婦ふたりが生活して行くには厳しいものがあるかも知れない。
だけど結婚してからも私は今まで通り働いているし、贅沢をしなければ普通に暮らしていける。
何よりも彼が大切にしているカフェに手を加えることは絶対にしたくなかった。
私たちがそこでも父の意見に反発し、いよいよ父は酷く憤慨したけれど、やっぱり母、由卯の後押しがあって何とか納得してもらったのだった。
「まぁ、お義父さんの気持ちも解らなくはないんだけどね」
「え?」
彼が少し伏し目がちになった。
「実際美兎ちゃんに働いてもらわないと生活がきついというのは本当だし」
「何を言い出すの? 私、共働き出来て嬉しいよ」
「……」
「端から悠真くんに養ってもらおうと思って結婚していないよ。それ、ちゃんと話し合ったじゃない」
「うん、そうだよ。でもね」
「でも……何よ」
「最近考えるようになってさ」
「何を」
「……」
「悠真くん?」
彼が言い辛そうにしているのを見て一瞬不安な気持ちになった。
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