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「本音を言ってもいい?」
「え……うん」
開かれた彼の口から出た言葉にコクッと喉が鳴った。
「俺はね美兎ちゃんと会うまで家族という名前の人間が嫌いだった」
「え?」
「正確にいうと、世の中に溢れている家族というカテゴリーに身を置いている人間が嫌いだった」
「……」
「ただ血が繋がっているだけで家族の一員として必要最低限の庇護を受けているだろう人間が嫌いだった。だから俺は俺自身の家族っていうものを持ちたいとも思わなかった」
「……」
「だけどね、美兎ちゃんと出会ってから俺、そういう考えがものの見事に変わっちゃってさ。美兎ちゃんとなら俺、家族っていうの持ちたいと思ってしまった」
「……」
「だからこうして結婚して、美兎ちゃんと家族になった」
「……うん」
彼に言葉は酷く稚拙で乱暴なものだった。だけど私に何を伝えたいのかはとてもよく解った。
「美兎ちゃんと家族になって、そうしたら自然と美兎ちゃんの家族も俺の家族になって──俺を守ってくれるだろう人たちがどんどん増えて行ったんだ」
「……うん」
「そういうのを得て初めて解った。俺、家族が好きだ」
「うん」
「だからね、俺は美兎ちゃんとの子どもが欲しいと思っている」
「!」
「正真正銘、俺の家族がもっと増えたらいいなと思っているよ」
「~~~」
彼のその言葉を訊いて思わず感極まってしまった。
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