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(ふふっ、惚れた欲目かな。何でもない仕草なのにいちいちカッコいいなぁ)
会話がなくてもただ彼の一挙手一投足を見ているだけで幸せを感じた。
「あのさ」
「ん?」
箱から出したカップを洗っている時、彼が口を開いた。
「怒っていないの?」
「へ」
「俺のこと、怒っていないの?」
「怒っていないのって……どういう意味で?」
「そのまんまの意味だけど」
「……」
彼が何を言っているのか解らなくて思わず首を傾げた。
「だって電話にも出ないしメールも返信しないし日曜が休みならどうしてデートに誘ってくれないの、とか諸々」
「……」
「普通、怒るでしょう?」
「怒らないけど」
「え」
「そりゃ電話に出なくてどうしたんだろうって心配して、ひょっとしてやっぱり付き合うことを後悔して無視されているのかもって不安になって悲しくなったりしたけれど怒りはしないよ」
「……」
「連絡取れなかった理由も解ったし、何より今、こうやって会えているから幸せ」
「……」
「だから怒らないよ」
「……ふぅん」
短くそう応えた彼はまた備品の整理に戻った。
(? 結局なにが言いたかったんだろう……)
彼からの要領を得ない会話にしばし頭の中にはハテナマークが飛び交っていた。
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