Episode11 SOULAGER

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カフェ【SOULAGER】。 その店名の意味は【和らげる・助ける・緩和する・軽くする】など複数ある。 初代店主が考えたその店名通りのカフェにしたいというコンセプトは現店主である彼にもしっかりと受け継がれている──。 「はぁ~~~落ち着くぅ」 「だね。こういう時間が持てる幸せが尊い」 「本当、このお店教えてくれてありがとうね」 「どういたしまして。でもいいでしょう? カフェの隣に保育ルームがあってひとりでお茶を飲めるなんて」 「そうだね。お店の中に子どもを遊ばせておくスペースがある処は見かけるけどさ、そういうのって結局子どもから目が離せなくて周りに迷惑かけないかって結構気を使うよね」 「そうそう。その点このカフェは店舗が別っていうのもいいけど専門の保育士さんが子どもを見てくれるのがいいんだよねー」 「短時間見てもらえるのって本当ありがたい。しかもカフェのお客は無料だなんて信じられないって思ったよ」 「子どもがある程度大きくなるまではすっごく重宝するよね」 「うんうん」 (……) 先刻からテーブル席で交わされるような会話を何度訊いたことか。 (美兎ちゃんの目論見は大当たりってところか) 子連れに優しいお店は世間には沢山あるだろう。そんな中のひとつにうちの店も入れたのなら嬉しいと思う。 そんなことを思っているとドアに取り付けているチャイムがカランと鳴った。 「いらっしゃまいせ」 「あの……このお店、子どもを見てくれるカフェだって訊いたんですけど……」 「はい。お母さんが此方でお茶を飲んでいる間は隣の保育ルームでお子さんをお預かりすることが出来ます」 「そうですか……。あの、料金は」 「此方でお茶を飲んでくだされば保育料は無料です」 「そうなんですか? あの、じゃあ、お願いします」 「かしこまりました」 ベビーカーに小さい子を乗せたややお疲れ気味のお母さんがまたひとり来店した。 大々的な宣伝はしていないものの、口コミでその評判は広がりつつあった。
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