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俺にしがみついている娘を引き離そうとしている美兎ちゃんの肩にやんわりと掌を乗せた。
「美兎ちゃん、あまり興奮しないの。お腹に障るでしょう」
「あ……」
「それに」
美兎ちゃんの後ろからひょっこりと顔を出している息子を抱き上げた。
「……パパ」
「よしよし。いつもママの後を追いかけるのは大変だろう? 幸樹は頑張り屋さんだなぁ」
「えへへ……」
長男の幸樹は3歳。いつも娘の後を追う母の後を追う健気なおっとり息子だ。
(──それにしても)
「美兎ちゃん」
「な、何」
「君は妊婦としての自覚があるの? そんな大きなお腹を抱えて走り回ったらダメでしょう」
「そ、それは……解ってるけど……」
現在美兎ちゃんは三人目を妊娠中。妊娠七か月のお腹はポッコリと前にせり出している。
「結良」
「!」
未だに俺にしがみついている娘に向かって少し強い口調で呼んだ。
「あまりママを困らすんじゃないの。ママが大変だって結良だって解っているだろう」
「……うん」
「急いでパパに会いに来てくれるのは嬉しいけどね、結良やママ、幸樹に何かあったらパパはとても悲しいよ」
「! パパ、ないちゃうの?!」
「泣くよ。パパの大切な家族がひとりでも欠けたらパパは泣く」
「~~~ご、ごめんなさぁぁぁぁい!」
途端に泣き出した娘の頭を撫でながらしゃがみ込んだ。
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