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「此処に来た人が飲み物で気持ちを和らげたり癒されたらいいなと思っている」
「だからSOULAGERってお店の名前なの?」
「まぁね」
「素敵な名前だね」
「俺が考えたんじゃないけどね」
「……」
見た目だけでは解らなかった彼の性格が少しずつ解って来たような気がした。
それと同時に彼が発する言葉の端々に窺える『ひとり』というキーワードが何故か気になって仕方がなかった。
(ひとり暮らししていてひとりでお店を切り盛りして、そして)
『告白して来た子が可愛いなって思ったら付き合って来た。付き合っていればその内好きになるだろうと思っていたから』
『でも──長続きしないんだよね』
それを言った彼が少し寂しそうだったと思うのは、私の彼はそうであって欲しいという願望からのものだったのかと思ってしまう。
なまじ見た目でモテる彼は私と似ている。本当はひとりでいるのが寂しいと思っている。だからちゃんと彼と恋愛して彼を幸せにしたいと思っているのだろう。
例えそれが彼にとっては見当違いな付き合いだったとしても、私は私のやり方で彼と本当の恋愛を育んで行きたいと思った。
やがて店内に差し込む光が橙色になっているのに気が付いた。
(あ、今何時だろう)
ふと店内に掛けられている時計に目をやるとあと一時間ほどで芳香と約束した時間になるところだった。
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