Episode02 悠真くんと美兎ちゃん

4/11

1715人が本棚に入れています
本棚に追加
/221ページ
「そろそろ晩ご飯の時間だね」 「そうだね」 「どうする」 「どうするって?」 「これから何処かご飯、食べに行こうか」 「!」 突然降って湧いた魅力的なお誘いに一瞬固まってしまった。 「あ、でも何か約束があるのかな? 先刻から時間気にしていたし」 「あ……うん。この後、友だちと約束していて」 「友だち?」 「うん」 (あわわわ~~どうしよう~~) いきなりご飯に誘ってくれるなんて想定外のことで戸惑ってしまった。それと同時に私の頭の中には夜のデートコースが張り巡らされた。 (食事して終わりかも知れないけど……でもひょっとしたらその後……) 自分に都合のいい妄想が後から後から湧いて出てしまってどうしようもなかった。 「ねぇ、美兎ちゃん」 「!」 隣に座っている彼が私の顔を覗き込むように見つめた。 「友だちとの約束は優先しなくちゃいけないよね」 「え? あ……そう、だね」 「うん。でもさ、俺も美兎ちゃんと一緒にご飯、食べたいなって思っているんだ」 「え!」 (何、急に?!) どうして彼がいきなりそんな誘うように私に迫っているのか解らない。 (もしかして……試されている?) 愛情を取るか友情を取るか──いわゆるそういう選択の岐路に今、私は立たされているということなのだろうか。 (この場合、どっちが正解なんだろう?) 仮に友情を優先した場合→『ふぅん、俺よりも友だち優先するんだ。残念だな』 (とか言いそう!) 反対に愛情を優先した場合→『友だちとの約束を蔑ろにする女って好きじゃないんだよね』 (って言いそう!) 突然発生した運命の二択に頭を悩ませている私に何かを感じたのか、彼は突然席を立った。
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1715人が本棚に入れています
本棚に追加