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「言っておくけど俺、そういうの乗らないから」
「……え」
「分かるんだよね、そういうの。わざとらしいというか」
「……」
「やっぱりそういうことは双方の同意がないとね」
「……」
「あれ、美兎ちゃんはそうじゃない? 美兎ちゃんもそういうこと目的でわざと演技しちゃうこととかあった?」
「っ、ない! ないよ、そんなの」
「そっか、よかった」
「……」
(なんだろう)
なんだかあっという間にモヤモヤとした嫌な気持ちがフッと無くなってしまった。
今まで感じたことがなかった感情が彼と一緒にいることで感じて知って行く。
(もしかしてこれが俗にいうやきもちというものなの?)
そんな感情、知らなかった。今まで付き合っている彼に他の女の子の影が見え隠れしていても大きく感情が揺さぶられたことはなかった。
例え他の女の子と仲が良くても彼が彼氏として私の傍にいてくれればそれだけでよかったから。
だけど──本当に恋愛をするってことはそういうことじゃなのかもしれない。
「どうしたの、美兎ちゃん」
「なんでもないよ」
彼を好きになって、付き合うようになってから今までの恋愛観は反省することばかりで、ちょっとだけ今まで付き合って来た人に対して申し訳ないなという気持ちが湧いたのだった。
「さて、と。これからどうする?」
「!」
不意に掌が温かい感触に包まれた。
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