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他愛のない話をしてまたいつも通りの日常が始まる。
(いいこと……かぁ)
瀧川さんからいわれた言葉を何度も反芻してしまう。確かに彼と付き合うことになったのはいいことだろう。
でも──……
(……やっぱり返信、ない)
昼休み。更衣室で携帯を確認するけれど彼からの返信はなかった。
メールを送ってから半日以上過ぎているのに返信がないということは流石にメールに気が付いていないという理由では済まないだろう。
(したくない訳ね、返信)
きっと煩わしく思っているのだろう。好きでもない女からもらったどうでもいいメールに返信するほど時間の無駄はないというところだろう。
(はぁ……解るんだよね、その気持ち)
私にも身に覚えがあるから怒りよりも申し訳なさの気持ちが湧いてしまう。
(仕方がない。しばらく放置しておこう)
そう思い気持ちを切り替えて携帯を鞄に仕舞い更衣室を出たのだった。
それからいつも通りの変化のない毎日を過ごし、寂しさが募るギリギリまで我慢して彼に会いにお店に行かない日々を過ごした。
(う~ん……そろそろ限界かなぁ)
金曜日の終業時間を迎え、うんと元気のなくなった私は少しよろける足取りで会社を後にしようとしていた。
「もう……会いに行っちゃおうかなぁ」
なんて弱音を吐いていると「おーい、美兎ぉ」と呼ぶ声に足を止めた。
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