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(本当にたまたまだったんだろうな)
芳香とのやり取りを終えて改めて店内を見回す。
(確かに若い女の子が多い、かも)
決して広くない店内はほぼ満席状態だった。若い女性に紛れて中年男性らしき人の姿もあったけれど、それはごくわずかだった。
(なんか不思議なお店)
来店したお客のイメージで出すカップを決めるなんて面白いなと思いつつも、自分に合ったイメージをされた人はいいかも知れないけれど反対にイメージにそぐわない見方をされた人はどういう気持ちになるのだろう。
「ちょっと、なんであたしのイメージが唐草模様なのよ!」
(わっ、考えている端から)
カウンター席に座っている女性客が店長らしき男性に突っかかっていた。
「こんな泥棒をイメージさせる模様があたしのイメージだっていうの?!」
「お客様、それは唐草模様ではなくパルメット文様という柄です。モチーフとなっているのは古代エジプトが起源とされるロータスをあしらった模様です」
「ロータス?」
「蓮の花のことです。花言葉は神聖、清らかな心。お客様からそういった雰囲気が滲み出ていましたので選んだのですが」
「し、神聖? 清らか……や、やぁだぁ、イメージし過ぎよ、もう!」
怒りを露わにしていた女性はあっという間に顔を赤らめて上機嫌になった。
(凄い!)
男性の巧みな話術、そして訊いたこともない知識をいい声で披露され私まで胸が高鳴るようだった。
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