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望んでいないイメージに怒るお客をスマートに交わす店長に胸がドキドキして仕方がなかった。
それまでの流れからもう一度手元にあるカップを眺めた。
(……うさぎ)
あの人は私をうさぎだとイメージした。
(す、凄い!)
それはある意味彼に恋するきっかけとしては充分過ぎる理由だった。
陽が暮れかかった19時。カフェに【closed】の看板が掲げられた。
「あの!」
看板を掛けに外に出て来た店長に声をかけた。
我ながら恥ずかしい行動だけれど、でも居ても立っても居られなかった。
「あの、バイト、募集していませんか?」
「バイト?」
「はい。今日、半日お店にいましたけど店長さんひとりしかいないみたいで」
「半日……お店にいたんですか?」
「……」
その言葉に少しがっかりした。
この人に特別な気持ちを抱いてからなんとか近づきたいと思った。そう思ったからミルクティーを四杯お替わりして特に何をする訳でもなくただ其処に居続けた。
(こんな女がいたら気にしてくれると思ったのに……)
そんなあざとい考えの元、閉店時間30分前に店を出て営業が終わるのを待っていたのだ。
(いやいや! 私の存在は仕事に熱中するあまり気が付かなかったということで!)
何とか自分自身に都合のいい言い訳で勇気を奮い起こした。
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