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そんなことを思っているうちに店長さんは分かり易く呆れたような溜め息をひとつ吐いた。
「あのさ、運命の人って何を根拠に言っているのかな」
「根拠?」
「君と俺が知り会ったのは今日が初めて。ほんの半日ほどのことで何をもって運命だっていうのかなって」
「だって私をうさぎだと思ったでしょう?」
「うさぎ?」
「イメージで選んだカップがうさぎだった」
「……あぁ」
「どうして私をうさぎだとイメージしたんですか?」
「どうしてって」
「私がうさぎ年生まれで名前が美しい兎と書いて『みと』って読むのを知っていた訳じゃないのに」
「みと?」
「はい。両親が無類のうさぎ好きでうさぎ年の子どもが欲しくて計画して私を生んで名前も兎に関した名前を付けたって」
「……はぁ」
「それに私が寂しがり屋で常に傍に人がいないとおかしくなってしまうって、そんなの知っている訳じゃないのにどうして」
「……」
そう、この人は私のことを解ってくれた。
私を見ただけでうさぎだとイメージしたその感性はきっと私のことを理解して幸せにしてくれる人だからこそのものだと確信した。
「あなたなら私を幸せにしてくれるはずです」
「……」
「だってあなたは私の運命の人なんですから」
「……」
「だから私は──」
「ストップ」
「!」
目の前に大きな掌で遮られ思わず口を閉ざした。
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