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A「画になる……?」
B「あぁ、画になるなぁ……ってさ」
A「人をそういう風に、面と向かって言うのはどうかと思いますよ? なんか、物として扱われているみたい」
B「そうかな、気に障ったなら謝るよ。ごめんね?」
A「いえ、いいですけどね。今更気にしないし」
B「ふーん、まぁ、深くは聞かないけど。その辺りは君自身のプライベートだからね」
A「で、画になると思ったから、どうしたんですか?」
B「なんかね、ほんとに君が言った通りのものなんだけど、『雪の中で虚空に向かってカメラを構えて佇む少女』なんて、そう見られるものじゃない。なんならRDBに載ったっていい」
A「絶滅を危惧されるほど珍しくもないと思うんですけど」
B「はっはー。でね、思ったんだよ。『この女の子には、いったいどんな物語があるのだろう』って。正確に言えば君というより、君のように雪の中でカメラ片手に立っている子に、どんな物語を用意できるだろう――そう思ったんだよ。だからその意味では、さっきの指摘通り僕は君を物として扱ってしまったかも知れない、『雪の中で虚空に向かってカメラを構えて佇む少女』という物語を生み出すソースとしてね」
A「物語を……生み出す?」
B「あぁ、君のその姿には色々な物語が眠っている。まず君はいったい何者なのか、君に見られているのは誰なのか、君たちの物語はどうなっていくのか。それを黙したまま見届ける雪は、何を隠してしまうのか。君の実像などまるで無視して、そういう妄想をしてしまうのさ」
A「なんか、厄介そうなのに目をつけられたものですね。いまの私はまぎれもなく悲劇のヒロインです」
B「いやぁ~、ごめんごめん」
A「心の籠ってない謝罪ほどいらないものはないですよ」
B「あ、そう? じゃあやめとこ」
A「それで? このやり取りも何かの物語になるんですか?」
B「もちろん、君にまつわる全てを物語にしてみせるさ」
A「せいぜい楽しみにしておいてあげます」
B「必ずや、ご覧に入れてみせましょう。君の中に潜む物語を、僕は必ずこの手で綴ってみせるよ、だって君は、」
A「とても画になるから?」
B「インスピレーションには困らないね」
雪の中で出会った少女は、まるで僕を試すように微笑んだ。そのときに感じた鮮烈な熱の限り、僕は物語を綴ろうと思う。
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