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「あぁいやいや!それより!鬼塚君の怪我が少なくて良かったよ」
なんて話を逸らして笑っていると、鬼塚は急に立ち上がり。顔を見せないように俯いたまま拳を握る。
あれ?もしかして怒らせたか?
「オイ」
「あ、はい……」
「正直な。あの時は助かった。後……今までも……」
「う、うん?」
「礼がしてぇんだが。お前、俺の事……一応まだ……好き。なのかよ」
ここはハッキリと「うん」と言った方が、フラグは立つだろうな。
「うん。好きだよ」
「……なら」
その瞬間。
鬼塚の両手はベットを押して、ギシッと音をたてた。
つまりは軽く四つん這いのような体制になり、そのまま俺の唇に、自分のを押し当ててきたのだ。
突然の事と、予想外な出来事に、頭の整理が追い付かない。
ただ。その時感じた鬼塚の熱く震える唇は、恥じらいと緊張感が直に伝わって来て、なんとも愛らしいーーそう本気で思ったのだ。
ゆっくりと唇が離れると、鬼塚は真っ赤になった顔のまま腕で自分の口元を隠す。
「礼は、した、からな」
これは暇つぶしで始めた恋愛ゲーム。
ただ鬼塚を惚れさせる為だけのゲーム……な、はずだった。なのに。
「俺の方が、攻略されそうだ……」
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