35人が本棚に入れています
本棚に追加
高校二年の春。
淡いピンクの花が咲き誇る桜の木の下で、上級生を殴り倒し。真っ赤な返り血と、傷だらけの顔で俺を睨みつける同じクラスの鬼塚恵。
彼は、完璧の俺とは正反対の言わば問題児である。
ワイン色の赤い髪に、両耳には二つのピアス。ネクタイもしていないワイシャツは胸倉を掴まれすぎたせいかヨレヨレである。おまけに目付きも口も悪い。
きっと、俺みたいな奴とは無縁の存在だ。
けど、あえて俺はコイツに近づいた。
俺とは正反対で、しかも男同士。
告白すれば、返ってくる返事なんて決まっている。
「気持ち悪い事ぬかしてんじゃねぇ。邪魔だ、失せろ」
予想通りの答え。
俺の告白に頬を染めず、照れくさそうに微笑んで、頭を縦に振らない。
こんなの初めてだ。
男同士でも、俺の事を好きな奴はたまにいた。
だから鬼塚は、男同士だからって理由だけじゃない。俺みたいな奴が嫌いだから、完璧で優等生なこの俺が嫌いだから、あんな目を向ける。俺の告白を気持ち悪いと吐き捨てる。
俺は初めて失敗をした。初めて否定された。
「あぁ、なんだろう。とてもドキドキする」
最初のコメントを投稿しよう!