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「あ、勇人君だ!」
「ねぇねぇ勇人君!今度いつ遊べる?」
「ごめんね?今結構予定入っててさ。空いたらすぐに教えるよ」
よく遊ぶクラスの女子達のことさえ、全然知らないというのに。
なんで鬼塚の事はこんなに……。
「なんだろ、これ……」
温かい。満たされていくような感覚。
まるで綺麗な花を見つけた時のような、自分だけの秘密基地が出来た時のような、不思議な感情。
ーー会いたい。そう思った。
気が付くと俺は立ち上がって、鬼塚がいるであろう場所に足を運ぶ。
「やっぱり。屋上か」
「はぁ……また来たのかお前は。相変わらず物好きな野郎だ」
怪我の手当もせず、屋上で寝転ぶ鬼塚の姿に胸が躍る。
きっと、こんなにも無防備な姿を見せるのは俺だけかもしれない。
「全く。君はいつも怪我だらけだな。ほら!手当てするから見せて」
こうして誰かの言葉耳を貸して、返事をしてくれるのは俺だけかもしれない。
そう思うと、なんだか嬉しくなる。
「チッ、いいから失せろよ」
「ヤダ」
「だいたいこんな怪我、手当しなくても勝手に治る」
「あのねぇ~そうやってどれだけの傷跡を残してると思ってんの?なに?それとも勲章なの?」
「別にそういうわけじゃ」
「はい。じゃあ傷見せて」
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