恋愛ゲームの攻略法

1/16
前へ
/16ページ
次へ

恋愛ゲームの攻略法

俺は今まで、生きてきた人生の中で苦労をしたことが無い。 俺の家神上(かみじょう)家は、父母共に有名企業の社長でとても裕福だ。それでいて子供を縛ることなく、ほとんど俺を自由にさせてくれる。 おかげで俺は、自分の気に入った高校に入り。好きな部活に入って、自由に遊んだ。 成績優秀で、運動神経も抜群。さらに顔も性格も良く。裕福な家庭。 俺は多分、何でもできる完璧な人間という奴だろう。 苦労なんてしたこともないし、思い通りにならないなんてことはなかった。 だからこそ、俺の人生はつまらない。 努力しなくても、悩まなくても、俺はなんでも出来てしまう。なんでも手に入れてしまう。 特につまらなかったのは、恋愛だ。 いや、俺自身本当の恋愛なんてしたことなんてないのだけれど。大抵の女子、いや俺の事なんて興味無さそうだった女子でさえ、俺が告白すれば嬉しそうに頭を縦に振った。勿論告白されるのだって日常茶飯事である。 なにもしなくても、俺の恋愛は成功する。 それがとてもつまらない。 ギャルゲーの主人公でさえ、一人を口説き落とすのにあれだけの選択肢を選んで、何度も何度もリトライしてはやり直しているというのに。俺はプレイして一時間足らずできっと全員を攻略している。 ゲームは、やりこむからこそ楽しいはずだ。 調べては、何度も挑戦して、挫折して、けどそれでも諦めず頑張って、そしてようやくクリアする。 恋愛も同じなはずだ。 味わってみたい。そのドキドキを、楽しさを。 結果。 物は試しに俺は、コイツに告白してみた。 きっと完璧な俺でも、いや。俺だからこそ攻略できない相手。 「鬼塚恵(おにづかけい)。俺と付き合ってくれないかな?」 「……は?」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加