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弓道部のある部室棟へは、3階にある教室を出て1階の職員室前にある渡り廊下から移る。部室棟には様々な部活の部屋が設けられており、中庭に弓道部用の武道場が設けられている。
久し振りに通る渡り廊下。今年の初め頃までは頻繁に出入りしていたのに、今は行く回数が減ってしまった。
吹き抜けの廊下を少しばかり懐かしみながら渡っていると、ふいに目の前が霞んだ。
「え……?」
冴歌は思わず足を止め、ごしごしと目を擦る。そしてもう一度、部室棟の入り口の方へ視線を向けると突然強い風が吹きつけた。
「きゃ……っ」
風に煽られて捲りあがるスカートを押さえ、顔と目を伏せて風をやり過ごそうとした。が、吹きつける風の中にあの鈴の音が聞こえて思わず顔を上げる。
さらに強まる風に、冴歌は自分の体を支えきれず廊下と外を阻む腰ほどの高さの壁に体を預けなければ立っていられないほどになった。
片手で風を避けながら、薄く目を開くと同時にピピッと頬と腕に赤い筋が走り抜ける。
「うっ……!」
赤い飛沫が飛ぶと同時にチリチリとした痛みが体を襲う。更に切り傷は数を増して行き、顔を庇う腕だけではなく、制服もところどころ切り刻まれて足や腹部にまで傷が及んだ。
ジンジンとした痛みが全身を駆け抜け、冴歌はヨロリとその場に片膝を着いた。
少しばかり風が収まると、冴歌はようやく何が起きたか確認しようと目を開く。その瞬間ハッとなって目を見開いた。
いつも見ているはずの変わらない光景。でも、そこに広がっているのは赤と黒に染まった風景だった。
空は黒く、建物は赤い。
異様なその光景に頭が錯乱状態になった。
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