第12話 最初の接触

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 チリーン……。  再びあの鈴の音が耳に聞こえてくる。辺りを見回してみるが、どこから聞こえて来るのか分からない。が、徐々に周りに白い靄が立ち込め始めてきた。 「な……に?」  何が起きたか分からずに険しい表情を浮かべたまま、ゆっくりと周囲を包み込む靄を見つめる。すると風を切るヒョウヒョウと言う音と共につむじ風が目の前で起きた。そのつむじ風の中にキラリと光る鋭い眼光が目に止まった。  逆巻く渦の中にいるのは、鋭い鎌を両手に携えた……イタチ。 「カマイタチ……」  妖怪の中でも有名な部類に入るカマイタチは鋭い牙を剥き、両手の鎌を擦り合わせてこちらを完全に威嚇している。  靄の量は徐々に増え、カマイタチの姿が捉えられなくなるほど濃さを増してくると、いよいよ音と気配だけで相手を判断しなければならなくなってしまう。  ヒュウヒュウと音を立て、右へ左へ移動するカマイタチの動きはとても素早い。  体中傷を負い、錯乱気味の冴歌には奴の動きを捕える事はおろか避ける事も出来ない……。  冴歌は胸元の護符を押さえ、祈る思いでぎゅっと目を閉じる。  先ほどの胸騒ぎはこれだったのだ。助けを呼べる状況でもない。何とかしなければ……。
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