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「人であり、神である。人として生まれた魂は、神には戻れない。けれどこの子の魂はいつの世も、その身を削り人々の贖罪をしている。災いを予見し、幸を分け、時に人の命を肩代わりして。そうして命を削る生き方を、この子は選んでいる」
「どうしてそんな生き方!」
「どうする事もできない。それがこの子という存在だから」
神の表情も、悲しげに歪む。だからこそ、これを誰もが望まないのだと知った。アルブレヒト以外は。
「助け、たい……」
ラダは涙を流して訴えた。何を対価にしてもいい、こうして神と話せるのなら、救う方法を教えてほしい。
「……お前はこの子を慕っていますね」
「はい」
「……方法はあります。ただ、貴方の存在は消えます」
神は多少躊躇ったように思う。どこか人に近い感情を持つ神。けれどこの神はその昔、人の女性を愛し、その間に子をもうけた神なのだ。人を、愛しているのかもしれない。
「人の魂に、近づければこの子は人の輪に戻れます。けれどそれには、贄が必要です。この子を愛し、この子を慕う者が」
怖く無いと、言えば嘘かもしれない。けれど自分よりも、アルブレヒトの死が怖い。
神は静かに瞳を閉じ、ラダに大事な事を伝えた。そして最後に、救いを口にした。
「次の満月の夜、金色の狼を見つけなさい。その者が、苦しみを終わらせてくれます」
胸に大切な言葉を刻みつけ、ラダは静かに頷いた。
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