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近況(フェオドール)
四月になった。北の地はまだ残雪もあるが、帝国に入ればそれもなくなった。
「凄い、これが帝国なんだ……」
思わず東の森を出てそんな事を言うと、荷物を運んでくれた護衛の二人が笑っていた。
東の森で手配していた馬車に乗り、王都に着いたのは数日後。初めてみる帝国の王都は荘厳で雄大。圧倒される空気に気圧されながらも、フェオドールは身支度をしっかり整えてカールとの謁見に臨んだ。
カールとは、実は初対面ではない。クシュナートにカールが留学していた時、一年程一緒だった。とはいえ、フェオドールはアルヌールの影に隠れていたかんじだったが。
覚えていないだろう。思っていたが、謁見の間にはカールともう一人知っているクラウルがいるばかりで、他は人払いがされていた。
「フェオドール、久しぶり。なんだか逞しくなったね」
「え? あの……」
「まぁ、硬くならないで。先の書簡である程度の事は知っている。辛い事もあったみたいだね」
とても親しげな語り口と視線に、思わずうるっとくる。でも約束したから、泣かずにグッと堪えた。
「本日は騎士団の者達の報告を兼ね、お願いに参りました」
「……留学の件だね?」
「はい」
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