開戦を前に(ファウスト)

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★カール  国境に兵が集まっている。  その報告を受けた夜、落ち着かない気持ちのまま私室の椅子に腰を下ろし、カールは項垂れていた。  いつまで経っても慣れないものだ。戦が始まると聞いて、直接そこに力を貸すことはできない自分の無力さを思う。大事な臣下が、そして友が身を危険に晒すのに、自分はこの城に居なければならないのだから。  疲れた息を吐き出す。するとそこへ、控えめな足音が近づいてきた。 「お気を、落とさないでください」 「デイジー?」  声に驚いて戸口を見れば、彼女はなんとも薄い夜着にガウンを纏うばかりでそこにいる。その姿に、カールはただただ驚いていた。  結婚して数ヶ月、二人の間に穏やかな育みの時間はあっても体の関係はまだない。カールは既に大人だが、デイジーはまだ幼い。恋愛に関しては更に初心で、キス一つで真っ赤になって照れてしまう。  それでいいと思うのだ。何も無理に大人の真似をする事はない。確かな愛情を確かめる時間を経て、それからで良いと思っている。  だからこそ寝室は分けた。内扉で繋がっているものの、ベッドは別にしてある。この時間に、その扉が開いた事は今までなかった。     
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