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震えている細い体を、どうしたらいいだろう。戸惑うくせに、高鳴る鼓動はどうしたら静まってくれるのだろうか。
「無理をしなくてもいいんだよ?」
「無理ではありません」
「デイジー?」
「……貴方の代で、この国を終わらせたりはいたしません」
「え?」
「貴方に何かがあっても、私に子が残ればその子は王の子です。この国を継ぐ、正当な血筋です」
静かに、でも確かに紡がれる言葉の重みを噛み締めて、カールは重く苦く、そして切なくなっていく。
この国を恨んでもいい身の上の彼女が、この国の未来を憂えて子を成そうというのか。まだ若く無知な体で、それでも必死に言ってくれるのか……。
でも、駄目だ。危険過ぎる。もしも知れれば彼女が狙われる。そんな事を、どうして願える。嬉しさと同じくらい、苦しさがこみ上げてくる。
「デイジー、できない。嬉しいけれど、幸せだけれど……最悪、君は逃げ続ける事になる。ずっと命を狙われる。私の子など宿して、君が不幸になるのは」
「貴方に何かあれば、私に幸せなどありません!」
睨み付ける目から、ポロリと涙が一粒落ちた。真一文字に結んだ唇が、強情に震えていた。
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