開戦を前に(ファウスト)

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★オリヴァー  先行した第一師団とファウストから遅れて翌朝、オリヴァーは第四師団を二班に分けて準備を始めていた。今日の昼にはここを発ち、手前のバロッサにて拠点を構える。丁度王都と国境の中間にある港町であり、物資輸送に適している為だ。  昨夜は少し眠れなかった。行軍と言っても今まで眠れないなんて事はなかったのに、胸を不安が埋め尽くして寝付けなかったのだ。  そうしていると、不意に来客を伝えられる。この忙しいのに一体誰がと、半ば怒りさえ感じながら応接室へと入ったオリヴァーは、そこにいる人を見て途端に動けなくなった。 「すまない、忙しいとは思ったんだが……どうしても、会っておきたくて」 「アレックス……」  彼の顔を見ただけで、ふつりと緊張の糸が切れた。不安に押し流されそうな心が折れて、涙がこぼれ落ちて止まらなくなる。  そっと近づいたアレックスの腕の中は温かく、力強い。背に回った腕の確かさを、体の全てで感じている。 「不安だったんだな」 「こんな事、初めてで……」 「今までは不安はなかったのかい?」 「ありません。こんな……離れる事が苦しいなんて」     
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