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「まぁ、それもそうだ。フェオドール、すまないけれど先に報告をしてくれるかい?」
「あっ、はい!」
カールに促され、フェオドールは立ち上がる。一度深呼吸をして、しっかりとした声で報告をした。
「クシュナートを出た騎士団一行と行動を共にしていた商隊からの報告です。商隊は無事にラン・カレイユへと入り、四月上旬、予定しておりました商業区ル・ネーブへと到着。ここで騎士団とは別れました」
「順調にそこまでは行けたのかえ?」
「特に大きな問題も諍いもなかったと報告されています」
「そうかえ」
途端、シウスは安心したように表情を緩める。ふわりとした雰囲気に、何となく気持ちも穏やかになった。
「ただ、楽観できない状況なのだそうです」
「と、言うと?」
「ラン・カレイユは既にジェームダルの属国となり、国内をジェームダル軍が闊歩している状況だと聞きました」
これに厳しい顔をしたのはクラウルとファウストだ。勿論、シウスの表情も引き締まっていく。それだけ、見過ごせない状況なのだろう。
「商隊の者が聞いた話では、王家が落ちた後にジェームダルの宰相という男が入城し、あっという間に掌握したそうです」
「その宰相の事、もう少し分からぬか?」
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