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外れだという場所から少し大きな通りに出ると、幾分人の姿を見る。だがどれも疲れているようだ。
その中でも多少立派だろう店の戸を開けると、一人の大柄な男がのそりと顔を上げた。
知っている顔だった。キフラスというよりは、ダンの野性味を感じる。短く刈り上げた赤い髪に、筋骨隆々の体躯。頬や腕に大きな傷跡が残っている。
無精ひげも生えたその男はチェルルを見ると顔全体としては小さな目を一杯に見開いて、ガタリと椅子から立ち上がった。
「た……ただいま……」
声をかける事を躊躇うチェルルは、顔を上げられていなかった。話しによるとアルブレヒトを人質に取られて五年、故郷に帰れずにいたのだそうだ。
ガバリと、筋肉だるまみたいな腕がチェルルを抱きしめ……締め上げている。だが、男はもの凄くデカイ声で一言吠えるように言った。
「バッカ野郎!! 心配させやがって!」
その光景はどこか、ジンと昔のランバートにも重なる。無茶をしたり心配させると、あのハゲ筋肉もこんな風にしていたものだ。
「まっ、ぐるじ! ギブだから離してドゥエインさん!」
バシバシ腕を叩くチェルルだが、この厚い筋肉では蚊が刺した程度だろう。苦笑したランバートが近づいて、そっと腕に触れた。
「ん?」
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