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「いや、だ……なんで、こんな……」
「チェルル……」
「こんな国に誰がしたんだよ! 少なくとも、先代の時代はもっと真っ当だったじゃないか!」
キルヒアイスがこんなにしたんだ。あいつがいなければ、今頃は……
悔やんでも悔やみきれない思いがこみ上げて、チェルルは子供のように泣きじゃくっていた。
その夜、寝付けないチェルルの側にランバートが座った。ずっと、気にしているのはわかっていた。わかっていたけれど、どんな風にしていいかわからずに知らないふりをしていた。
「何があったんだ?」
どう、答えたらいい? 帝国に行って、温かなものを知って、感情が抑えられない事がある。この国で理不尽を我慢して、偽る事を知ったのに、帝国はそんな上っ面の無理を簡単に引き剥がした。
「いいよ、言わなくても。のんびりしてるから」
「……して」
「ん?」
「どうして、お前等お人好しなんだよ。どうして、優しくするんだよ」
声が泣いていた。目からも一筋溢れてしまった。それでも、止められなかった。
よしよしと頭を撫でる手が心地良い。これを知ってしまったから、嘘がつけなくなった。
「どうした?」
「……故郷が、壊れる。神父様も死んで……恩人まで死にそうで……」
「……うん」
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