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「緊急報告! ジェームダル国境にて兵が集まり始めています!!」
全速力だったのだろう人物は青い顔でそれだけを叫ぶと、戸に掴まってズルズル崩れた。
一瞬の緊張。だがその後は、とても静かだった。
「出ます」
「編成は?」
「俺が国境に赴きます。同行は第一師団。第四は手前の町にて待機。第三は予定通り王都警備、第五は何かあった時の予備隊として王都に残す」
「分かった」
ファウストが立ち上がり、一礼して出て行く。シウスは真剣な目をして、同じく立ち上がった。
「暗府も動きます。ラン・カレイユ側からの侵攻も視野に入れます」
「頼んだよ、クラウル。オスカル、女性や子供、老人を中心に疎開先の融通を一応つけておいて。一部高官の子女や新生児を連れた女性、妊婦、重度の病を患っている者は先に出す」
「畏まりました」
「フェオドール」
「はい」
「どうする?」
「……まだ、残らせてください」
まさか到着した日にこんな事になるとは思わなかった。けれど、気持ちは決まっている。ギリギリまで、ここに残るのだ。
カールは苦笑して、ただ一つ頷いてくれた。
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