見捨てられた町ファラン

1/12
341人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ

見捨てられた町ファラン

 馬車で通常五日の道のりと聞いていたファランに到着したのは、予想よりも一日早い四日後の早朝だった。  それというのも二つ手前の町で馬車を捨てて変装を解いた。馬から馬車を離し、信頼できるという農夫に預けて徒歩を選択したおかげで、手前にある砦を通らずに町に辿り着いたのだ。 「それにしても、寂しいな」  コンラッドが戸惑うように言う。それに、ランバートも同意だった。  赤茶けたレンガを組んだ家々はどれも古く所々が崩れて見える。人の通りも少なく、人の気配も少ない。視線すら感じないのだから、そもそもの人口がいないのだろう。 「あ……」  チェルルの案内でドゥエインという人物の店を目指している最中、一行は崩れた教会の前にいた。そこで足を止めたチェルルは、震えながら建物を見上げていた。 「チェルル、もしかしてここ……」 「俺の、育った教会だ」  全員が建物を見上げたが、そこに人の気配はない。草も生え放題で、長く放置されたのがわかった。  チェルルの手に、力がこもる。言いようのない悔しさを押し殺すように俯いた彼は、それでも先を急いでいた。     
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!