2/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
忘れられない空がある。 それはとても美しかった。 こんなに綺麗なものがあるのかと驚いたくらいだ。 その時からずっと目が離せないでいる。 ずっと…。 「………なぁ」 それは時間にしてみればほんの一瞬だったのかもしれない。 けど、まるで時間が停止したかのように瞬きすら忘れてそれを見ていた。 その美しいーー…。 「ッッなぁってば!」 「?!…ん、何?」 馳せていた思い(考え)から引き戻された現実。 目の前で膨れっ面の連れの顔を見た。 不機嫌そうに眉を顰め、唇を尖らせている。 「何、じゃないよ!ボーッとしてくれちゃってさ!何考えてたのさ?」 「…ん?、んー……仕事の事?」 「疑問で返すな!」 怒りは収まらないらしい。 仕事だけど、久々に連れと2人で買い出しに出た途中だった。 だけど今日はちょっと上の空だな。 色々あって疲れてるのかもしれない。 「……なぁ」 「ん?」 「海行かない?」 今から車で走れば、日没前には行ける。 唐突な思いつきだけど既に頭の中では計画が練られ始めている。 「はぁ??海って…今仕事中だよ!?そんなのバレたら…」 「行きたいんだ。付き合って」 「ちょ…っ?!」 有無を言わさずに連れの手を引き、路肩に停車させていた車の助手席に押し込んで運転席に乗り込んだ。 こんな強引な事、滅多にしない。 滅多にしないから連れの表情は驚き一色だ。 驚いて、驚きながらも少し怯えた表情。 あとで、謝らなきゃな…と思いながら車を走らせ始めた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!