第1章茜空

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そしてあたしは、背後から先生の絵を覗いた。 「今日も空??先生、空好きだねー。」 「…はい。空は見ているだけで癒されますから。知ってますか?空にも色んな種類があるんですよ?」 「…そうなの?」 「ええ。」 「その中でも僕が好きなのは茜空です。」 「茜空?何それ??あたしと先生の下の名前入ってんじゃん。」 「…。…確かにそうですね。」 「ねえ、今…一瞬、間開けたでしょ?」 「気のせいじゃないですか?」 「…まあよいけど。で、茜空って何?」 「茜空はまあ、要するに夕焼けとほとんど変わりはないですが、 赤く染まっているんです。」 「ふーん…。空も色々あるんだねー。」 その時 ビュ 「わ!」 窓から勢い良く風が吹いてきた。 「ふう…。」 そう言って先生は眼鏡を外した。 その時、風で先生の前髪がなびいた。 (…え?嘘…。) いつもは重い前髪だから顔が見えないけど、 近くで見たら凄く綺麗な顔だった。 …イケメンだ。 「凄い風ですね。?どうかしましたか?」 「…え?」 思わず見とれてしまった。 「…新川さん?」 「そ、空って不思議だよね。」 何をパニクったのか訳の分からない事を口走ってしまった。 「…え?」 (いや、いきなり何言ってんのあたし…。先生ドン引きだよ…。) 「よ、良く見たらさ。色んな色混じってるんだね!き、綺麗だよね!私空大好き!」 (小学生か、あたしは。こんな事しか言えないなんて…。) そう言った後、明らかに先生の顔は曇っていた。 (…あ。) てか、先生下の名前空じゃん。 何か告白みたいじゃ…。 「ご、誤解しないでよ?そ、空の雰囲気が好きなだけだから!」 (止まれ~~あたしの口~~) 「…分かってますよ。」 今にも何言ってんだこいつ?とでも言いたそうな顔をしていた。 (ぎゃー!腹立つ!) でもこの日の空は本当に綺麗だった。 「…本当に綺麗。」 思わず口に出してしまった。 (まあ、どうせお前が空を語るなとか思われてそうだけど。) そう思って先生の方をチラっと見た時、 「…そうですね。」 そう言った先生が、見たこともないくらい優しい目で笑っていた。 その時、あたしは何かを打たれたように先生のその笑顔にドキドキしていた。
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