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ずっと申し訳なく思ってた。」
私は何も答えず、黙ってヒロの話を聞いた。
「実は、1年前の1月、健康診断の再検査を
受けたんだ。
結果は2月の初めに出た。
胃がんだった。」
「!?
胃潰瘍じゃなかったの?」
「俺が入院したのは知ってたんだ?
みんなにあまり心配されたくなくて、表向き
胃潰瘍って事にして、会社には長期休暇を
もらって治療に入った。
すでにステージ3だった。
ステージ3って分かる?」
「がんの進行具合でしょ?」
「うん。
5年生存率が50%を切ってた。」
「………」
「それを聞いて、俺はカナの事しか考えられ
なかった。
俺が死んだら、カナは泣くだろうな…とか、
もう守ってやれないのかな…とか。
いろいろ考えて、俺は苦しいけど、カナと
別れる事を決めたんだ。
俺が恋人のまま死んだら、カナはきっと
悲しんで苦しんで辛い思いをするだろ?
でも、赤の他人が死んでも、それ程、
苦しまずに済むんじゃないか…と思って。」
彼の表情から、嘘は言ってないと思った。
「でも、決して生きるのを諦めたわけじゃ
ないんだ。
頑張って治療して、完治した暁には、カナと
もう一度やり直そうって思って、辛い
治療にも耐えて頑張った。」
「今、具合はどうなの?」
「うん。
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