待ち伏せ

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「ごめん。 何度言われても、無理なの。 ほんとにごめんなさい。」 私は、頭を下げた。 「何で? 他に好きな奴でもできた?」 ヒロの顔には焦りが見える。 「付き合ってる人がいる。」 ヒロの顔がこわばっていく。 「いつから?」 「先月…」 さすがに4日前とは言えない…。 「最近じゃん。 俺たち3年も付き合って結婚の約束をする くらい上手くいってただろ? カナは、絶対、俺との方が上手くいくよ。 俺はカナのためなら何でもできる。 お願いだよ。俺とやり直そう?」 私が、どう答えれば諦めてくれるのか、必死で考えていると、私とヒロの間にスッと影が現れた。 「お話し中、失礼します。 隣の席まで話が聞こえてしまったものです から…。 私は田崎優音と申します。」 ゆうくんは、スーツの内ポケットから、名刺入れを取り出し、1枚ヒロの前に差し出した。 ヒロは条件反射で名刺を受け取った。 「課長さん?」 ヒロはゆうくんの顔と名刺を見比べて怪訝な顔をした。 一浪してるヒロは同期だけど、ひとつ年上の28歳。 未だ平社員のはずだ。 「すみません。 今、プライベートなので名刺を持ってなくて…」 「構いませんよ。 しかし、彼女は先程から迷惑をしているように     
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