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死ぬ、死ぬ、死ぬ
亡霊の声のようなうなり声が頭の中で響いている。
冬夜は正体不明な声の主を黙らせようとして、空を掴んで目が覚めた。
びっしょりとスウェットが汗で濡れていた。バクバクと心臓が高鳴っていた。
悪夢はいい加減よしてくれ。
深くため息をついてうなだれた。シャワーを浴びなくちゃならない。
風呂場に入るのも恐ろしいのに。
いい加減にしてくれよ。
ゴミだらけの床を歩いて真っ黒な浴室の扉に手を伸ばした。
死ぬよ
声がした。
死ぬわけないだろ。俺はただ風呂場を開けるだけだ。
ここに何かいる訳がない。
ドアノブは想像以上に冷たくて
ヒヤリ、とした感覚に冬夜はたじろいだ。
恐ろしかった。泣き出したかった。
いっそ狂いたかった。
狂わせてくれよ、そしたら俺はここから出られるのに。
こんなに恐ろしいのに、どうして俺は正常なんだ?
それとも、正常だと錯覚しているだけなのか?
どちらでもいい。
それを判断するのは俺じゃない。
多分もう直ぐ監査官が来る。
それまでにこの黒いドアを開けて風呂に入るんだ。
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