これはある世界において現実である

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カチカチと音がして、緑のライトがまぶたをこじ開けられた冬夜の目に当てられる。 「眼球は今回も陰性のようですね。」 続いて耳、頭皮、腹、性器、足、と隅々までライトで点検された。 「上司のシャルドネからも聞いておりますが、あなたはとても耐性のある方のようですね。過去20回の検査も全てクリアしている」 冬夜は、フン、と鼻を鳴らした。 「報告書で読んだだろ。何度調べても同じだよ。俺はあのウイルスには感染しない。」 いっそ感染してくれたらどんなに楽か。 シトラスは検査が終わると部屋の掃除を始めた。 全ての動きに無駄がなかった。 機械的に休みなく、冬夜の部屋を見違えるように綺麗にした。 「それでは失礼します。食料など、ご希望ならもう少し良いものをご用意出来ますが」 シトラスはゴミ袋に詰められたカップ麺や菓子パンのゴミをちらりと見た。 「いいんだよそれで」 「かしこまりました。では」 シトラスが玄関のノブに手をかけた時、冬夜は聞いた。 「シャルドネはいつ来るんだ?」 シトラスは、さあ?と微笑んで出ていった。 また部屋は暗い穴のような静寂が訪れた。
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