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冬夜は立ち上がって気づいた。
体がびっくりするほど重い。
引きずるような足取りで玄関に行くと、ぼんやりする頭でつい、インターホンを確認するのを忘れてドアを開けた。
しまった
気付いた時には遅かった。
外からは真っ黒な、それこそ墨汁のような漆黒の空気が鉄砲水のように部屋の中へ吹き込んできた。
冬夜は叫び声をあげた。
正気の沙汰じゃない。もうやめてくれ、入ってくるな!
絶叫とともに冬夜は気を失った。これでやっと死ぬのかと意識の底で思った。
気づくと、冬夜はベッドに寝かされていた。
部屋は最新のエアコンが設置され、とても温かい。
柔らかい新しい毛布が気持ちよかった。
部屋は綺麗に片付けられ、シチューのいい香りがする。
「お目覚めになりましたか」
キッチンの方から声がした。シトラスだ。
「起きたら、食事を取ってください。それからお風呂に入りましょう。あなたは何日もループにいたので、瀕死の状態だったのですよ」
シトラスはテーブルにシチューとパンを持ってきた。
「さっきの黒いのは、、」
「私が着くのがもう少し遅かったら、飲み込まれていました。あなたのミスというより、あなたのループに気付くのが遅れた我々のミスです。お気になさらずに」
シトラスは機械的に微笑んだ。温かみが少しも感じられない。
「あれはなんだったんだ」
「あなたの部屋に訪れるものについては、ご自分が一番よく分かっていらっしゃるでしょう?」
冬夜はぼんやりと考えながらシチューを食べた。機械的に作った機械的なシチューの味がした。
それからシトラスに促されて、何日かぶりに風呂に入った。
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